線形代数学「抽象ベクトル空間」
久しぶりの更新.思いのほか毎日忙しくてなかなか記事書けずにいました.
逃亡せず地道に頑張ります.たぶん.
無駄話はこの辺にして,早速見ていきましょう.
今日やろうと思っているのはタイトルにもある通り抽象ベクトル空間.
前提知識は数ベクトル(高校でおなじみのベクトル)や行列の演算ができるくらいのもので何とかなると思います.
抽象ベクトルを見る前に
高校時代に登場した「ベクトル」は,「矢印」と「長さ」を決めてやることで向きと大きさを目で見てわかる,直感的に扱いやすい便利な道具でした.
今からは専ら「抽象的なベクトル」の話をする予定です.
見てもらえればわかってもらえると思いますが,
「抽象的なベクトル」を考える際に「ベクトル=矢印・長さ」といった認識をいったん忘れるとわかりやすいと思います.
じゃあ抽象ベクトルについて見ていきましょう.
ベクトルの公理
ベクトル(vector)は公理によって抽象的な定義が与えられます.
ベクトルの公理
集合が以下の条件を満たすとき,をベクトル空間と呼ぶ.
太字の小文字アルファベットはベクトル空間の元(要素)を表し,
これをベクトルと呼ぶ.小文字のギリシャ文字はスカラーとする.
(V1) 加法に関する法則
に対して,以下の法則が成立する.
- 加法の結合則
- 加法の交換則
- 加法の零元の存在 に対して,となるゼロベクトルが存在する.
- 加法の逆元の存在 に対して,を満たす逆ベクトルが存在する.
(V2)スカラー倍に関する法則
スカラーに対してが定義され,以下の法則が成立する.
- ベクトルに対する分配則
- スカラーに対する分配則 (
…どんな教科書にも載ってるとても基本的な事柄です.
こんなんあたり前やんけと思うかもしれません.
しかし,ここで重要なのはベクトルは(公理を満たす)集合の元だということです.
何もいつもいつも数値で表現されてなくてもよく,
とにかく集合が上の公理を満たせば,それをベクトル空間と呼ぶのです.
だから抽象的だとうたっているわけです.
今までお馴染みの数ベクトル空間は(大げさに言うと)数多くあるベクトル空間の一つにすぎないのです.
ベクトル空間の例
ここで,抽象的なベクトル空間の例を見てみましょう.
例えば,実次正方行列全体の集合はベクトル空間となります.
カッコつけて書くと↓みたいに書きます.
本当にこいつが公理を満たすかどうか確認してみます.
(正方)行列同士の加法はもともと定義されおり,
これから加法に関する結合則と交換則は容易に得られます.
(は いずれも実次正方行列)
逆元の存在も,集合が実行列全体から構成されていることからわかります.
今回扱っているのは実行列なので,スカラーは実数です.
当然スカラーにまつわる法則も当然成り立ちます(省略)
零元は零行列
を考えることで存在を確認できます.
こうして,実次正方行列全体がベクトル空間の公理を満たすことは
容易に想像できるでしょう.
行列をこうして「ベクトル」と呼ぶのは不慣れなうちは抵抗がありますが,
ベクトルなもんはベクトルなのです。。。
他にも,次多項式,常微分方程式で習う線形微分方程式の解全体の集合,
今後見る予定の双対空間やテンソル空間もベクトル空間です.
挙げだすときりがないのでこの辺でストップ.
どれも「矢印」や「長さ」で表せるような直観的なものではないですが,ベクトルの仲間なのです(しつこい)
今回はこの辺でおしまいー
[最後に一言]
行列表記するのに2時間はドブに捨てた.まだ文字とか見難いところ多いからおいおい更新します。。。